ネットワークビジネス、投資詐欺、ポンジスキーム、高額商材、セミナー…
こういった類の場所には、二種類の人間しか集まらない。
騙す人間と騙される人間だ。
今回は俺がレセプションパーティー(出資者の集い)で出会った犯罪者についての体験談を語りたい。
金が集まるところには、必ず犯罪者が集まる。
世の中にうまい話は無いので、騙されないようにしてほしい。
投資にハマっていた当時
20代最大の失敗
俺はポンジスキームの被害で大金を失ったことがある。
詐欺会社の名前はエクシア合同会社である。
俺の20代最大の失敗であり、最大の学びであった。
この時の経験から、俺はかなりの人間不信に陥っている。
エクシアでの体験は嫌だったが、そのおかげで自己防衛力はかなり強化された。
ただ、問題はエクシアの一件だけでは終わらなかった。
エクシアのパーティーを通して出会った自称投資家こと犯罪者が、俺の金を狙っていたからだ。
華やかなパーティーは危険でいっぱい
俺はエクシアのパーティーで、様々な人と連絡先を交換していた。
投資家にとって情報交換は欠かせないと思っていたからだ。
- モーターショーVIPイベントやスーパーカーオーナーの集い
- 高級時計の展示会やジュエリーショー
- ラグジュアリーホーム展示会やオペラのプレミア上映
こういったイベントは、参加者同士の交流を目的とした一面もある。
だが、これらのイベントには、必ず犯罪者も参加する。
相手を見極める目を持たない人は、彼らの餌食になってしまうだろう。
パーティーというのは華やかなようで、実際は危険に満ち溢れている。
見栄からついつい資産額や所持するハイブランドをアピールしてしまうこともあるだろう。
楽しい雰囲気から、警戒心が薄れてしまうかもしれない。
そして、俺はまんまと詐欺師のターゲットにされてしまう。
犯罪者との出会い
急な連絡
新手の投資に勧誘されたのは、エクシアのポンジスキームが表沙汰になった後である。
自称ビジネスオーナーから急に連絡が来たのである。
この人物は、美容室のオーナーであり、複数の店舗を展開しているとのことだ。
話にかなり独特な方言があり、一人称が「あっし」だったのが特徴的だ。
おそらく、成功することを夢見て上京したが、東京の現実に打ちのめされたのだろう。
そして犯罪者に身を落としたというわけだ。
「お久しぶりです、エクシアのレセプションパーティーでお会いした〇〇です」
「エクシア合同会社が破綻してしばらく経ちますが、その後はいかがお過ごしですか」
「もし〇〇さんがよろしければ、一度お会いして近況報告でもできたらと思うのですが」
今まで何の連絡もなかった人から急に連絡が来るのは、ろくなことではない。
ましてや一度しか会っていないのであれば、十中八九犯罪ビジネスがらみだ。
ただ、俺は「どうせもう失うお金も無いし、せっかくだから会ってみるか」と決めた。
そして、お決まりの”紹介したい人”もセットでついてきた。
東京の一等地にオフィスを構える成功者
ビジネスオーナーとの待ち合わせ場所は、東京の学芸大学駅というエリアだ。
1ルームでも家賃8万円はするというなかなかに相場が高い場所である。
駅前はよくある感じの駅だ。
しかし、そばには閑静な高級住宅街も広がっているので、著名人や資産家の家があることも多い場所だ。
案内されたのは紹介したい人の家兼オフィスという設定の物件であった。
三階建ての一軒家で、鉄筋コンクリートの見るからに高価そうな建物であった。
玄関には来客用のスリッパがたくさん並べてある。
日々この家で、違法ビジネスが行われている気配を感じた。
そして、俺は応接室のような場所に案内された。
そこにいたのは、俺と年も変わらないような20代そこそこの若手の人物だった。
この人物は投資家という設定だ。
暗号資産の取引で資産が億を超え、今はその取引方法を自分が見込んだ人に伝授しているとのことだ。
なんでもアメリカにいる友人から、有力な情報をもらっているのだという。
もちろん、この話は全て嘘だ。
苦労して身に着けた方法を、あっさり他人に教えるのはおかしい。
教えた人が同じ市場のライバルになれば、自分の取り分は減ってしまうからだ。
ということは、最初からそんな手法は存在しないのである。
俺VS犯罪者二人
軽く挨拶と名刺受け取りを済ませた後、ビジネスオーナーが俺のことを投資家に話し始めた。
- エクシアで互いを知り合った経緯
- 今はどんな仕事をしているか
- 趣味は何か
- 今日来た目的
もっとも、このやりとりも事前に決まっていたのだろう。
俺はもう詐欺には懲りていたので、今回はボイスレコーダーを使って録音もばっちりしていた。
後で聞き直して、冷静な状態で会話を分析するためだ。
だいたい、俺から金を引き出そうにも、俺にはもう金もない
そして、案の定、「一緒にビジネスをやらないか」という話になった。
俺は「やろうにもお金が無い」と濁し、その日は帰宅した。
きっぱり断らなかったのは理由がある。
彼らが法律やルールの通用しない犯罪者だからである。
しかも、自分はそんな犯罪者の仕事場というホームグランドにいる状態だ。
下手に不機嫌にさせると、何をしでかすかわからない。
まともでない相手には、言葉ではなく、その場を去るのが一番なのだ。
後日、「また話したい」という連絡がきたが、俺は無視をした。
名刺の会社は存在しない
受け取った名刺の会社を調べてみると、ネット上には全く情報が出てこなかった。
「やっぱりな…」というのが感想である。
当然、ホームページも存在しない。
- 所在地
- 会社概要
- 主な取引先
- 業務内容
名刺にはこれらのことが記載されていたが、全く実態がわからないのだ。
住所や電話番号を調べても、何も情報はでてこない。
何をやっている会社なのかもわからない。
実在している会社なのかも不明。
もはや名刺としての機能すらなかった。
そんな会社のオーナーと言われ、いったい誰が信じろというのだろうか。
詐欺のコツはすごそうに見せること
いくらでも捏造できる身分
詐欺ビジネスで最も大切なことは、「いかに自分をすごそうな人物に見せるか」である。
つまり演技力が大事なのだ。
- 住んでいる家や車→基本的に他人の家や車
- 名刺→肩書は経営者、オーナー、コンサルタント等が効果大
- 服装や小物→誰もが知るハイブランド(偽物、中古、借り物)
- 実績→完全な嘘だが調べようがないのでバレない
- 過去の失敗談→相手の疑いを取り払うために
身分は小道具と演技でいくらでもリアルに捏造することができる。
こういったものをひけらかすことで、相手は勝手に誤解してくれる。
しかも、騙されたことがない人は、初対面で相手の素性を疑うことさえしない。
今まで雇われでしか働いたことがない人からすれば、これだけで十分だ。
「俺とは住む世界、考え方が違うすごい人なんだ」となってしまう。
ただ、俺は声を大にして言いたい。
経営者は犯罪者と紙一重だ。
犯罪者が演じる身分で、一番相手に効果的なのが、経営者やオーナーである。
冷静さを奪うために
加えて、相手の冷静さを奪うということもテクニックの一つである。
これは一般のビジネスでも多用されている。
まともな状態で判断されては、ビジネスというのはなかなか成約しない。
なので、いかにして相手に正常な思考ができない状態、つまり焦らせるかが重要なのだ。
- タイムセール、カウントダウン等の限定イベント
- あなただから教える、見込みがある、選ばれた人だけなどの特別感
- 一対複数人、ウイルス感染、個人情報をばらす等の危機意識
- 教授、著名人、経営者等の権威のある人を使う
- 返報性の法則や単純接触効果等の心理学のテクニック
これらの技術を使うことで、人は正常な判断ができなくなることがある。
なので、いつまでも詐欺は減らないし、新しい手法が確立されるのである。
もし、自分が正常な判断ができない、わからないと思うのであれば、話を家に持って帰って寝かせることをお勧めする。
時間が経てば興奮の熱も冷めて、冷静に判断ができるようになるからだ。
もちろん、親しい間柄の人物に相談するという手もある。
ただ、この場合はほぼ反対されると思ってほしい。
大切な人には危険な道を歩ませたくないと誰もが思うからだ。
どんなにわかっていても、反対されるというのは気分がいいものではない。
相手の助言に素直に従える人ならいいのだが、そうでない場合は注意が必要だ。
まとめ
投資家のパーティーで出会った犯罪者について語ってみた。
キラキラした世界というのは、華やかに見えて大変危険な世界である。
特に金が集まる場所は、必ず犯罪者も集まっている。
相手を見極める目を養わないと、面倒なことに巻き込まれるので気を付けてほしい。