手袋と聞くと、防寒具やファッションアイテムを思い浮かべる人が多いだろう。
実際、ユニクロで売っているヒートテックライニンググローブは俺も愛用している。
だが、世の中には一生ものと呼ばれるほど高品質で、職人技が詰まった手袋が存在する。
その代表格が、英国発の老舗ブランド『デンツ』である。
今回はそんなデンツのディアスキングローブを解説する。
1777年から続く英国王室御用達のブランド
デンツの歴史

デンツの歴史は約250年にもなり、イギリスの歴史と共に歩んできたブランドである。
創業は1777年、ジョン・デントがイングランドのウスターで創業した手袋のブランドだ。
ちなみに、このウスターという地名はウスターソースのウスターだ。
最高級の素材と熟練の職人技を駆使し、ブランドはすぐに有名になったという。

- 19世紀の産業革命で製造効率が向上、世界中に輸出される
- 世界大戦中は軍用手袋を製造
- ジョージ6世の戴冠式で使用、”王にふさわしいフィット感”というブランドの代名詞が誕生
- 王室、貴族、ハリウッドスターなどに愛用される
伝統的なクラフトマンシップと英国の気品を象徴するブランドとして、現在も最高級の手袋ブランドの一つに数えられているほどである。
他の二つはフランスのエルメスとイタリアのメローラというブランドだ。
英国王室御用達

デンツと言えば、英国王室御用達のブランドとしても有名である。
この英国王室御用達、ロイヤルワラントというのは、単に王室の人たちが好きで使っている愛用品という意味ではない。
審査には厳しい条件があり、それをクリアしたものだけが認められる証なのだ。
項目 | 詳細 |
---|---|
定義 | 英国王室が特定の企業や職人に対し、一定期間製品やサービスを提供していることを認定する称号。 |
発行者 | 1. チャールズ国王(King Charles III) 2. エディンバラ公爵(Duke of Edinburgh) 3. ウェールズ公妃(Queen Camilla) |
対象ブランド・企業 | ファッション、食品、日用品、自動車、家具、インテリアなど、幅広い分野で優れた品質を提供する企業。 |
認定基準 | 1. 王室に少なくとも5年以上継続して商品やサービスを提供していること。 2. 卓越した品質と信頼性を備えていること。 |
有効期限 | 5年ごとに更新が必要。条件を満たさなくなった場合は取り消されることもある。 |
使用権 | 承認されたブランドは「Royal Warrant」の紋章を商品や広告に使用できる。 |
メリット | ブランドのステータス向上、信頼性の証明、国際的な認知度の向上。 |
制約 | 商業利用の際は厳格なガイドラインに従う必要がある。王室と直接の関係を誇張してはならない。 |
英国王室御用達は、ブランドが最高品質と信頼性を持つ証明と見なされているのだ。
この称号を持つこと自体が、世界中で特別なステータスを示すものとされている。
デンツとの出会い
合成皮革の手袋がボロボロになる

俺はデンツ以前は合成皮革の手袋を使っていた。
ただ、合皮というのは本革でなく、化学繊維で革の見た目を模倣した素材だ。
布地にポリウレタンや塩化ビニルを塗布しているだけなのである。
そのため、購入時はよくても、経年劣化でボロボロになってしまう素材なのだ。
手に馴染んで愛用品になるころには、剥がれやひび割れを起こしてしまう可能性がある。
合皮はコストパフォーマンスに優れた選択肢だが、耐久性や高級感を求める場合は本革がいい。

そこで、俺は本革の丈夫な手袋を探した。
その時、デンツというブランドにたどり着いたのだ。
といっても新品ではなく、中古で買ったアイテムだ。
新品で買うと3万円から5万円というとんでも無い価格になってしまうからだ。
手袋だけで3万円というのはある意味すごい。
ディアスキングローブ

俺が購入したのはデンツのディアスキン、つまり鹿革のグローブだ。
ペッカリーやヘアシープと並んで、デンツの職人技が光る素材の一つである。
用途 | 素材 | 理由 |
---|---|---|
フォーマル | ヘアシープ | 滑らかで光沢感があり上品な見た目。 |
ビジネスカジュアル | ペッカリー | 高級感がありつつシボ模様が味を出す。 |
カジュアル/アウトドア | ディアスキン | 柔らかく丈夫で日常使いに最適。 |
手触りはとにかく柔らかい。
表面の独特なしわ模様が特徴で、よくある牛側の手袋とは違う上品な雰囲気を醸し出している。
男らしい無骨らしさもある手袋だ。

革製品は湿気に弱いアイテムも多いが、ディアスキンは撥水性も高い。
軽い雨や雪の日でも心配は無用だ。
アウトシームという職人技

手袋の縫い方がアウトシームというのも特徴だ。
アウトシームとは外縫いのことで、縫い目が手袋の外側にあるのである。
写真で緑色に写っている箇所が、全て外縫いで縫われているのだ。
そのハンドステッチの美しさはまるで芸術品である。
なお、色が黒でないのは、革の断面が見えているためである。

指先に関しては、立体的なX形状になっており、縫製技術の高さがわかる。
一般的な手袋はインシームのほうが圧倒的に多い。
アウトシームは製造の段階で手間がかかるため、作られないのだ。
- 縫製の正確さ(縫い目が直に表面に出るため、均一さが必要)
- 製造工程が多い(アウトシームは手縫いで行う)
- 素材の扱いが難しい(力加減や針の選び方が重要)
もはやアウトシーム手袋を作れることそのものが、信頼できる証のようなものなのである。
比較項目 | アウトシーム縫い(外縫い) | インシーム縫い(内縫い) |
---|---|---|
縫い目の位置 | 縫い目が外側に見える(手袋の表面に縫い目がある)。 | 縫い目が内側に隠れる(手袋の裏側に縫い目がある)。 |
見た目 | 縫い目がデザインの一部としてアクセントになる。カジュアルで視覚的に特徴的。 | 縫い目が見えず、すっきりとした上品でフォーマルな印象を与える。 |
着用感 | 縫い目が外にあるため、手袋の内側が滑らかで快適。 | 縫い目が内側にあるため、若干のゴロつきや違和感を感じることがある。 |
用途 | ドライビンググローブやカジュアルシーン向けに多い。 | フォーマルな手袋やエレガントな場面に適している。 |
耐久性 | 縫い目が外にあるため、摩耗に対して強い。ただし、引っ掛けるリスクもある。 | 縫い目が内側に隠れるため、見た目が保たれやすいが、内側から摩耗することがある。 |
見た目の高級感 | 縫い目が目立つ分、ややカジュアルでラフな印象。ただし、ブランドによって高級感が演出される。 | 縫い目が隠れるため、洗練された上品な仕上がりが特徴。 |
使用シーン
特別なシーンのみで使う

確かにデンツはいい手袋だとは思う。
ただ、俺はこのディアスキンを普段使いはしていない。
特別なイベントの時のみ使用している。
普段使いをしてしまえば、どんなに丈夫な手袋でも摩耗は避けられないからだ。
新品で買えば3万~5万ほどする手袋を無暗に使うのはNGだ。
手袋も服や靴と同じで、連続使用をするアイテムではない。
なので、デンツという一流の手袋を持ちながら、普段はユニクロの手袋を使っている。
まとめ
デンツのディアスキングローブについて語ってみた。
確かに英国王室御用達の手袋とあり、その完成度は洗練されている。
手袋ブランドの最高峰の一つと数えられるのも納得だ。
ただ、あくまでも特別なイベントの時のみ使う手袋といった感じだろう。