俺は筋トレは好きだが、ランニングは嫌いだ。
そもそも身体を鍛えているのは体力向上と健康目的だからだ。
マッチョになりたいわけでもなければ、速く走りたいわけでもない。
ただ、そんな俺も自衛隊時代はランニングが必須だった。
今回はアディダスの高性能ランニングシューズであるアディゼロのタクミレンシリーズを紹介する。
俺はランナーではないので、専門的なことはわからない。
だが、確かに良い靴というのは走りを変えてくれる存在である。
現在はタクミレンシリーズは生産されていない。
だが、アディゼロシリーズにその技術は生き続けている。
とにかく走る自衛隊時代
自衛隊はとにかく走る
俺が新卒で入隊した自衛隊では、とにかく走ることが当たり前だった。
「3歩以上は駆け足」なんて言葉もあったくらいである。
だが、走るというのは何も戦闘服に銃を携えて走るだけではない。
普通のトレーニングウェアでランニングもするのである。
自衛隊で訓練といえば腕立て伏せをイメージする人は多いだろう。
確かに俺の時も腕立て伏せは多かった。
だが、それと同じくらいランニングのトレーニングも多かったのだ。
俺も海上自衛隊の教育隊時代は、毎日のように走っていた。
- 0600に起床、隊舎前に整列、そのまま隊舎回りを3周
- 午後の教務が終了したら、基地内の専用コースや芝生でランニング
- 休みの日ですら、朝はランニング
元々運動は嫌いではなかったが、慣れるまでは大変だった。
最初の頃は半月板を損傷したこともあり、膝が痛くなってしまった思い出もある。
ただ、人間というのはどんな環境にも適応する生き物だ。
2、3ヶ月も経てば、走ることが当たり前となり、特に苦も感じずに日課のランニングをこなすようになっていた。
仲間の期待に応えたい
自衛隊で特徴的なのは、個人ではなく集団で行動することだ。
これは日々の訓練だけでなく、トレーニングのランニングでもついてきた。
実際、俺はきついトレーニングをするときは仲間とやった方がいいと思っている。
共に頑張る仲間がいれば、強い支えになるからだ。
自衛隊の場合、同期は苦楽を共にする間柄なので、その団結力は凄まじい。
特に同じ班ともなれば、仲間の期待には応えたいと思うものだ。
俺は班の中で、走るスピードは12人中10番目と遅い方だった。
それでも、周りの仲間の存在があったからこそ、最後まで頑張れたのは事実だ。
持久走競技大会で班優勝を勝ち取る
教育課程には競技大会というものが存在する。
各分隊の班ごとにわかれ、チームごとに成果を競い合うのだ。
1班の人数は12人前後である。
1分隊は4つの班で構成され、俺の時は6分隊が存在した。
つまり、6分隊×4班の24チームで競い合うことになるのだ。
- 持久走
- 水泳
- 短艇
- スポーツ
種目は全部で四種類あり、それぞれが特定の日に開催されるのだ。
俺が所属していた班は、持久走で見事班優勝を果たしている。
正直、今まで生きてきた人生の中で、持久走競技大会の日ほど速く走った日は無かった。
この日のことは、今でも鮮明に身体が覚えている。
その日に使っていた靴こそが、アディゼロのタクミレンブーストであった。
なお、持久走は班員の合計タイムから平均を割り出し、順位づけがされる。
もちろん、たまたま同じ班内に走りが速い人が集まっていた可能性もあるだろう。
だが、それは他の班でも同じことがいえる。
結局のところ、日々のトレーニングによる積み重ねが、最終的な勝敗を分けるのだ。
アディゼロとの出会い
急な班長からの言葉
俺がアディゼロに出会ったのは、班長からの言葉がきっかけだった。
ちなみに、ここでいう班長とは3曹以上の階級の人のことである。
俺の分隊の分隊長や甲板班長はランニングにやたら前向きで、自ら率先して走っていた。
そんなある日、班長は意外な発言をした。
「お前ら、そろそろちゃんとしたランニング用のスニーカーを買った方がいい」
訓練でも厳しかった班長から、こんな言葉が出てきたのは驚いた。
要するにモノの力を借りるということだからだ。
ここでいうランニング用のスニーカーとは、”走る時に使う靴”という意味ではない。
“ランニング専用に開発されたスニーカー”のことである。
というのも、半分程度の分隊員は一般的な運動スニーカーを履いていたからだ。
実際、俺も普通の運動スニーカーを履いていた。
ちょっとしたスポーツや普段履きで使えるアレである。
もちろん運動スニーカーでも走ることはできる。
だが、より結果を重視するのであれば、走ることのみに特化したランニングスニーカーの方が良かったのだ。
横須賀の店で購入
幸い、俺の班には陸上をやっていた同期がいた。
俺を含めた何人かの班員は彼と共に、ランニングスニーカーを買うことにした。
そこで紹介されたのが、アディダスのランニング特化モデル、アディゼロだった。
なんでも靴裏のチップが強力で、地面を掴む感触があるらしい。
まず驚いたのが、その価格である。
価格は定価で約1万7000円ほどだった。
今まで4000円程度の運動靴を使っていた俺にとって、その価格は衝撃だった。
「たかがスニーカーで1万7000円もするなんて…」
だが、当時は自衛隊の給料もあり、金銭面では全く問題は無かった。
「お金を払うだけで速さが手に入るなら安いものである」
俺はもっと速く走れるようになりたかったし、何より同期の期待に応えたかった。
俺はアディゼロのタクミレンブーストの黒を購入した。
使ってみた感想
地面を掴む感触がわかる
アディゼロ初使用時のランニングトレーニングは、いつもよりワクワクしていた。
この頃は訓練にも慣れ、実際の競技大会と同じコースでタイムを測るようにもなっていたからだ。
履いてみた感想は、重量約200gでとにかく軽いということだ。
本当に地面を掴む感覚があるのである。
しっかり前に進んでいる、そんな感じの靴だった。
俺が今まで使っていた運動靴は一体何だったのかと思うほど違いは劇的に感じられた。
確かに班長がランニングスニーカーを買えといった意味がよくわかった瞬間だった。
当然、タイムも短縮され、俺はアディゼロの凄さを実感した。
性能の秘密
匠シリーズはアディゼロの中でも特に高性能なモデルである。
日本人向けのランナーに特化した設計がされており、正しく当時の俺が求めていた靴だった。
その走りやすさの秘密は、様々な最新技術が靴に使われていることにある。
- BOOSTテクノロジー技術で足元の反発とクッション性を両立、エネルギーリターンを最大化
- タイヤメーカーのContinentalソールを採用、高いグリップ力と耐久性を確立
- アーチ部にトーションシステムという補強剤を使い、安定した走行を実現
- 踵には摩耗に強いラバーのadiwear素材を使用
地面を掴む感覚があったのは、BOOSTテクノロジーのためだったのだ。
靴裏一つをとっても、非常に複雑なソールの形をしている。
そもそもがランナー向けのモデルということで市場が少なく、かつ多くの最新技術を使っている。
これなら価格が高くなるのも納得である。
問題点
耐久性が低い、あくまで本番用
タクミレンシリーズはとにかくレースの結果を出すことを追求したモデルである。
靴自体の軽さ、地面を掴むのに適した薄いアウトソールはその代表だ。
しかし、その結果靴の耐久性が犠牲になっている。
薄いアウトソールはひび割れまでの時間が短いという欠点がある。
靴裏のラバーチップは使用回数を重ねるとポロポロ剥がれ落ちてしまう問題もある。
つまり、あくまでも本番のレース用の靴であり、練習用の靴としては適さないのだ。
もし練習でも使いたいのであれば、耐久性にも適したアディゼロのボストンシリーズがおすすめである。
ちなみに、自衛隊でも本番用の靴というのが存在する。
普段履きとは別に、ピカピカに磨き上げた革靴を一足準備しているのだ。
この靴は普段は使わず、分隊点検や式典といった特別な時のみ使う靴である。
一般人には無縁
確かにアディゼロは走る人には魅力的な靴である。
実際、俺もこの靴のおかげでタイムの更新ができたのは事実だ。
だが、裏を返すと走らない人には無用の靴なのだ。
練習用の靴としては使えないため、使用機会も厳選しなくてはいけない。
俺が自衛隊でアディゼロ使ったのは、通算でたったの5回である。
- 教育隊での練習で2回
- 競技大会の本番で1回
- 部隊での体力測定で2回
部隊での体力測定を最後に、俺はアディゼロを使うことは無くなった。
自衛隊をやめた後は、そのまま実家の飾り棚に置かれることになった。
今は走る気など全く起きないが、アディゼロを見ると自衛隊時代を毎回思い出す。
まとめ
アディゼロのタクミレンブーストについて語ってみた。
ランニングシューズとして非常に優れており、結果を出したい人ならアディゼロはおすすめだ。
お金を払うだけで高いパフォーマンスを発揮できるなら、安いものである。
ただ、耐久性には難があるので、使用シーンは厳選して欲しい。